商品や物品を輸入しようとしたとき、関税がいくらになるのか、何となくは分かっているけど「関税分類(税番)が細かすぎて分からない!」ということはありませんか?
特に、輸入販売において、関税は仕入原価に直結する重要な経費です。関税率が明確になることは、必須と言えます。「関税は輸入してみないと分からない」と思っているかもしれませんが、実は事前に把握することができます。それが関税の「事前教示制度」です。このやり方が実は税関のページを見ても、正直かなり分かりにくいです。そのため、今回はBiZDELiにて、この方法について、誰でもできるようにわかりやすく解説します。
※本記事は2022年時点で作成しています。変更されている可能性がありますので、なるべくご自身で税関サイト等で詳細をご確認下さい。また、お気づきの点がありましたら、ご一報にご協力下さい。
関税の事前教示制度のメリット
最初に関税の事前教示のメリットを整理します。事前教示することで受けられるメリットは次の通りです。
- 輸入前に関税率が明確になる
- 事前教示の回答は「原則3年間尊重」される
※尊重されるのであって、絶対とは限りません。特に事前教示と輸入の実際の内容が異なる場合は、輸入時の関税率が一致しない場合があります。また、法改正等により変更になる場合があります。 - 他者がすでに同一品目について事前教示されている場合、すぐに税率が分かる
事前教示のメリットは、何よりも輸入前から関税率が明確になることです。商品などの仕入高を、より正確に把握することができます。
また、事前教示の内容は有効期限が3年間となります。提出した問い合わせ内容が正確であること、法改正などにより税率が変わっていないことが条件です。心配な場合は、都度問い合わせると良いでしょう。初回の事前教示から3年以内の場合は、電話問い合わせにして、以前と変更がないことを確認すればOKです。
事前教示の内容は、過去に回答があったものについては、税関のホームページで閲覧ができます。すでに同様の商品について、他の方が事前教示が行われている場合、ご自身で事前教示をする必要はなくなります。
関税の事前教示のやり方
どのように関税の事前教示を利用するのかを解説します。
まずは過去の事前教示回答事例で検索
まずは、あなたと同様の事例で、事前教示がされている実績がないか確認します。
「 商品名 + 事前教示 」
でGoogleなどで検索しましょう。
例えば、「トランプカード 事前教示」で検索してみます。すると、以下のような検索結果が出てきます。「遊戯用カード・税番, 9504.40-000」として分類され、関税率が「基本3.8% 、 協定3.2% 、 特恵Free」となることが分かります。
クリックしてみると詳細を確認いすることが可能です。
この関税の事前教示の回答は、原則インターネット上で公開され、誰でも閲覧が可能です。いわゆる、関税率のQ&Aのような存在です。あなたが文章で問い合わせした場合も公開される可能性があります。何かしらの理由において、一時的に非公開にすることも可能ですが、非公開期間は最大180日間となります。ただし、個人を特定する情報は一切開示されません。
税関の検索フォームからも検索・閲覧が可能です。
事前教示回答事例(品目分類関係)
https://www.customs.go.jp/searchsv/jitsv001.jsp
これらのすでに存在する事前教示で把握できれば、最も楽に関税を把握することが可能です。それでも分からない、あるいは不安な場合は、次の文章による事前教示を行います。
文章での関税の事前教示
過去の関税の事前教示にあなたが輸入したいものと同一のものがない場合、税関に文章による事前教示を行いましょう。
あなたから税関に文章で問い合わせ、税関から文章で回答があります。
電話や窓口での問い合わせも可能ですが、記録が残らないため、それら回答が輸入通関の審査で優遇されることはありません。そのため、記録の残る文章で問い合わせをするようにしましょう。
税関からの事前教示への回答は、基本的には90日以内に返信されます。古い記録ですが平成20年の実績では平均32日です。余裕を持って行うことが良いでしょう。
文章での事前教示の3つステップ
文章での事前教示を利用するには、あなたから税関に郵送で書類を提出することが必須です。ただし、いきなり文書で送ってはいけません。税関側で推奨されている手順があります(この点が、税関のホームページを見ても読解できないレベルで分かりにくいです)。手順は以下の通り。
- 電話で問い合わせ
- ” インターネット専用 “の「事前教示に関する照会書」で事前チェック
- 事前チェックの返信を元に修正して” 文書専用 “の「事前教示に関する照会書」を作成して、税関に郵送
順番に説明していきます。
電話で問い合わせ
事前に詳細を電話で確認してから、書類を記入するように、税関側が強く推奨しています。
「●●(国名)から●●(商品名)を輸入する予定です。関税の事前教示をインターネットを利用して照会したいです。事前の問い合わせを推奨されていたため問い合わせました。どのような手続きを取れば良いでしょうか。」
と電話で聞いてみましょう。なお、照会前に電話を推奨していることについては、こちらに掲載しています。
電話番号一覧
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/bunrui/toiawase.htm
インターネット専用の「事前教示に関する照会書」をメール送信
関税の事前教示の際に、必要な書式フォーマットは、税関にて提供されています。基本的には、それらを商品が輸入される予定の管轄の税関に提出しますが、どの税関で確認しても、全国の税関で利用可能です。
フォーマットとサンプル(記入例)は以下のサイトから取得できます。
東京税関(正式な税番(関税分類)を知りたい方)
https://www.customs.go.jp/tokyo/zei/k_sodan1_1_1.htm
まずは次のフォーマットを利用します
フォーマット:税関様式C第1000号-13
各項目の説明:税関様式C第1000号-13の記載要領
サンプル記入例:文書による事前教示照会書記載例(最も近いと思われるものを参考にする)
フォーマットに記入したら、メールで担当の税関に送信します。送信時はPDFで送りましょう。
メールアドレスの一覧はこちらです。
以下、参考例を掲載します
これらの内容に不備があると、どのように修正すべきかの通知が返信されます。修正して再度提出しましょう。以下に返信事例を記載しておきます。
なお、実物サンプルが必要ではない等と判断された場合は「インターネットによる照会を文書による照会に準じた取扱」に切り替えられ、関税の通知が届きます。一方、サンプルが必要と判断された場合は、インターネット上では完結できず、次の文章による事前教示に進む必要があります(上記の1枚目の画像の赤枠の部分)。サンプルが必要ない等でインターネットで完結する場合は、こちらで終了です。
文章専用の「事前教示に関する照会書」を郵送
上記のメールが税関で確認されると数日内に返信が来ます。「●●を修正してください」等の指示があります。その指示に従って、文章での事前教示の照会書を記載します。
フォーマット:税関様式C第1000号
※拡張子を「.doc」から「.docx」に変更すると図形が使えます。
各項目の説明:税関様式C第1000号の記載要領
作成した文章を「●●税関 業務部 首席関税鑑査官」宛に郵送します。
東京税関の場合は以下の住所となります。サンプルが必要な場合は、サンプルと一緒に送付してください。
東京税関の【 窓口・電話による照会 】(送付先)
https://www.customs.go.jp/tokyo/zei/k_sodan1_1.htm
後日、郵送にて書類にて「事前教示」が送られてきます。
分からないことがある場合
記入に際して、分からないことがある場合は、管轄の税関に電話で問い合わせるのがおすすめです。電話をかけてくる人は、正しく納税したい人ですから、税関の担当者かなり親切に教えてくれます。迷って調べる時間をたくさん使うより、電話をして早く確実に解決しましょう。